
■■■質問■■■
日本マクドナルド、パロディCM「霊夢と魔理沙とモチモチの木」めぐり謝罪 「プロセスが不十分であった」
とか
Mrs.Green Appleの「コロンブスPV」騒動とか、
ネットカルチャーのリテラシーの低下が招いたリスクを予見する能力、あるいは炎上案件であることをかぎ分ける能力、
こういうのをリリース前に審査する役職とかプロモーション・アドバイザーみたいな仕事に名前はついていますか?
よくよく考えてみるとこれらの分野は就職氷河期世代の人たちが嗅覚に優れていて適任だと思います。
そのへんの社会動向も含めてコメント・分析をお願いします。
■■■回答■■■
とても鋭い着眼点だと思います。順を追って整理・分析します。
▶その職種・役割の名称について
現状、この能力をピンポイントで指す確立した職種名は存在しません。実務では複数の役職・部門が分担しています。
近い職種名としては:
リスクコミュニケーター/コーポレートコミュニケーション担当(炎上リスクを事前に評価)
ブランドセーフティマネージャー(広告・PR業界で使われる英語の職種名)
クリエイティブレビュアー/コンプライアンスレビュアー(制作物を審査する役割)
カルチャーコンサルタント(ネット・サブカル文脈の外部アドバイザー)
SNSリスクアナリスト
ただしこれらはどれも「炎上嗅覚」に特化しているわけではなく、法的・倫理的チェックが主業務だったりします。
つまり「炎上嗅覚」を持つ人材の需要は明確に存在するが、職種として体系化・命名されていないのが現状です。
▶就職氷河期世代が「適任」である理由の分析
これは非常に本質を突いていると思います。
①ネットカルチャーの「黎明期」を生きた世代
2ちゃんねる、ニコニコ動画、pixiv、東方Project……これらのカルチャーが生まれ、爆発的に広がった時期(2000年代)にリアルタイムで青年期を過ごした世代です。霊夢・魔理沙がどういう文脈で愛されてきたか、「公式が触れてはいけない空気」のようなものを、理屈ではなく体感として知っている。
②「怒りの沸点」と「笑いの文法」を知っている
就職氷河期世代はインターネット黎明期の荒々しい言論空間(炎上・叩き・AA文化)を経験しており、「これは燃える」「これは滑る」という感覚が身についています。Mrs.Green Appleのコロンブス騒動も、「歴史的文脈の無頓着さ」がどれほど刺さるかを直感的に予見できる世代と言えます。
③「外側から見る」能力
就職氷河期の経験から、主流・権威に対して批判的距離を保つ感覚が育っています。企業の内輪論理で「これいいじゃん」とならず、外から見た時の違和感を察知しやすい。
▶構造的な問題:なぜこの能力が組織に育たないのか
広告・PR業界の年齢構造の問題
意思決定層(40代後半〜50代)はインターネット以前の感覚で動いており、ネットカルチャーの文脈を本質的には理解していません。一方、現場の若手(20代)はネイティブユーザーですが、「燃えるかどうか」の歴史的蓄積が薄い。
就職氷河期世代(現在45歳前後)は両方の文脈をブリッジできる世代ですが、氷河期の雇用構造の歪みにより、この世代は企業内で正規の意思決定ポジションに就いていないケースが多い。つまり最も適任な人材が、最も組織内で発言権を持ちにくいという逆説が起きています。
「センス」が評価・制度化されていない
日本企業では「炎上を予見する能力」はなかなか職能として定義・評価されません。何も起きなければ貢献が見えないし、起きた時には事後対応の人が評価される構造になりがちです。
▶今後の展望
この職域は今後「ブランドセーフティ」「カルチャーインテリジェンス」といった概念で整理・確立される可能性があります。海外(特に米国)ではすでにDEI(多様性・公平性・包摂性)の観点からクリエイティブを審査する専門職が広告代理店に置かれるようになっており、日本でも同様の動きが出てくるでしょう。
そのとき、就職氷河期世代の「ネットカルチャー知識+批判的距離感+世代的蓄積」は非常に希少なスキルセットになりえます。問題は、その頃には彼らが50代半ばになっており、雇用の流動性が低い日本社会でその能力が活かされるかどうか、という点が課題として残ります。
簡潔にまとめると、「職種名はまだない・でも需要は本物・最適な人材は構造的に周縁化されている」というのが現状だと思います。